冬期講習会 受付中! Click!

中1英語ショック

中学1年生の英語といえば、アルファベットからI am,You areの文をやって、というイメージが強いと思います。保護者の方も、中1の英語の記憶をたどってみると、最初のテストでは良い点をとった記憶があるかもしれません。中学生の間は英語で苦労した覚えがないという方も多いかもしれません。しかし、昨今の英語を巡る教育行政の迷走は、現在の子供たちに大きなひずみをもたらしていると思います。学問としての英語の基礎段階を理解できないままどんどん時間が過ぎていくという問題が起こっていると思います。つまり身についていないということですね。4技能、読む・聞く・話す・書くを重視して小学生から英語に親しんでもらおうという流れが強く、私もその流れは大歓迎です。では、なぜ英語が身についていかないのか。

そもそも、言語が身につくとはどういうことなのか。それは、日本語について考えれば早い話です。幼児の頃に、周りの人の話す言葉を聞いて自分で話していって、小学生になって漢字や文章読解、作文などをやり、本を読んだり文法を学習したりして完成されるものです。現在の日本の英語教育もこの流れを重視しています。小学生のうちに、canやwant to、過去形なども含めたよく使うフレーズを聞かせて、話させて、中学生で文法を勉強させましょうという流れです。I want to drink water.みたいなフレーズを刷り込んでいって、あとからwant toは不定詞の名詞的用法という文法を使っている、というような文法で補強しようとしているのです。私はこのフレーズの刷り込みには大反対です。本人の記憶に残したいなら、無理やり暗記させる方がよっぽど効果的だと考えています。刷り込みでは記憶に残りません。なぜなら、日本語との決定的な違いは、日常生活で使わないからです。日常生活で英語を使わざるを得ないという状況がないからなのです。

英語を話せる日本人の多くは、中学高校で文法や単語暗記、重要構文暗記を行い、自主的に留学や語学教室などで英語を使うことで最終的にマスターしていると思います。つまり、順番はどうあれ、結局は日常的に使うという経験がないことには言語というものは身につかないのです。4技能のうち、読む・書くは学習で補うことができますが、聞く・話すについては日常的に使うということが重要なのです。ということは、日本語の力も、幼児期の聞く・話すにかかっているということになりますが、それはまた別の機会で話すことにしましょう。

「4技能をバランスよく扱う」という英語学習の目的は、日常的に使わないという高く大きな壁に阻まれて、じつは最初から無理な話なのです。それなのに、小学生に無理にフレーズを使わせて、刷り込みが成功したと思い込んでしまっているのです。でも現実は、身についていないのです。子供たちにはさらなる難問が降りかかってきます。中学校の英語の授業です。教科書の構成自体が、小学生の頃に刷り込みに成功しているという前提で作られているので、canやwanto to、過去形や疑問詞疑問文などは、重要文法として扱われずに、「もう知ってるよね」「小学生の頃に出てきたから覚えてるよね」という扱いで当たり前のように出てきます。主語とは何だ、述語とは、動詞とは、疑問文とは、疑問詞とは何だということを知らないまだよちよち歩きの子に、canや過去形が降りかかってくるのです。雨と風と雪とひょうと雷がいっぺんに降ってきているような状況です。さらにいうと、子供たちはbe動詞と一般動詞のちがいを教えられていないので、もちろん理解していないのです。「です」と「ます」の違いを知らないのです。「こうえんであそぶです~」と言っているタラちゃんと同じ言語レベルの子に、can、went、How manyなどが襲いかかってくるのです。傘の使い方を知らないのに雨と風と雪とひょうと雷が降ってくるのです。この教科書のつくりでは、中学校の先生だって大変です。全部文法として扱っていては授業時間が足りなすぎる、だったらフレーズ暗記させるしかない、テストや入試だけ乗りきってくれればあとは高校で何とかなるだろう、と判断するしかなくなります。そう、小学校の英語の先生が、刷り込みに成功したと思い込んで中学校に丸投げしたのと同じように。でも、テストや入試さえ乗りきってくれればそれでいいの、という意見もわかります。生徒と話していても、将来英語は使わないから、テストだけクリアできればいいの、と言われます。私が言いたいのは、そこが重要なのではなく、理解不足のまま丸投げされている間に、何人の生徒が英語嫌いになってしまっているか、ということです。ALTが入って、ゲームとかやって、一見楽しそうですが、それは大人の目線から見たもので、子供の目線だったり、小学校から中学校、中学校から高校、大学、大人という長い目線から本質を見なければいけないと思います。

と言っても、現実の教育の流れは変えられませんし、小学校の英語の授業が楽しくて英語が好きという子もたくさんいます。そして、中1英語に苦労していない子ももちろんたくさんいます。私が言っているのは、少数意見なのかもしれません。ただ、私はその少数に目を向けたい人間なのです。塾業界で見てみると、どの塾も「4技能をバランスよく」というお題目を学校と同じように言っていますが、私としては、できもしないことを手広くやってどれも中途半端で満足いくものにできなくて英語嫌いを増やすぐらいなら、あえて絞ってみてもいいんじゃないの?と考えてしまいます。せめて、「です」と「ます」の区別がついて否定文と疑問文を理解してタラちゃんを卒業したうえで、フレーズ暗記でもなんでもやるべきなんです。「英語を使えてる」という実感を持つことこそが基礎段階では重要だと思います。英語嫌いを増やすことは私にはできません。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次